診療支援
診断

関節痛
arthralgia
中村 孝志
(京都大学 名誉教授)
中川 泰彰
(日本バプテスト病院整形外科 主任部長)

関節痛とは

定義

 関節痛とは,関節の痛みをいう.ここでいう関節とは,上肢では,肩,肘,手関節,手指のMP関節〔中手指節関節(metacarpophalangeal joint; MCP)〕など,下肢では,股関節,膝,足関節,足指のMP関節〔中足指節関節(metatarsophalangeal joint; MTP)〕などを指す.

患者の訴え方

 患者は,「肩が痛い」「手がこわばる」「膝が腫れているように思う」などと訴える.ただし,訴えの一部は,関節リウマチなどの重篤な疾患であるとの恐怖観念から生じることもある.局所が痛いのか,痛みの部位が多発しているのか,鈍痛なのか,激痛なのかを把握する必要がある.

患者が関節痛を訴える頻度

 整形外科外来患者のなかでは,関節痛を訴える患者は20〜30%程度であり,関節由来の症状が最も多い印象である.

 関節痛の部位として膝関節が最も多く,その原因の主なものは変形性膝関節症(膝OA)である.その頻度は,最近のコホート研究によると50歳以上でX線上の膝OAは2,400万人,X線検査で膝OAと診断されて痛みを訴える患者が820万人(男性210万人,女性610万人)になるといわれている.

症候から原因疾患へ

病態の考え方

(図1)

 患者が関節痛を訴える場合,まずそれが全身疾患であるのか,または局所の関節のみに原因のある疾患なのかを考える.

 全身疾患ならば,関節リウマチや全身性エリテマトーデスなどの膠原病を中心に精査する.局所の関節のみに原因がある場合は,外傷,慢性疾患などの関節そのものの精査につながっていく.

 関節痛を引き起こす原因疾患として主なものを表1に示す.

病態・原因疾患の割合

(図2)

 局所的疾患が圧倒的に多く,外傷と慢性疾患はほぼ同じ頻度と考えられる.膠原病がその次に多く,悪性腫瘍は1%以下である.病態,原因疾患の頻度とその臨床的重要度を図2に示す

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