診療支援
診断

筋萎縮
muscular atrophy
山下 一也
(島根県立大学 学長)
小林 祥泰
(小林病院 理事長)

筋萎縮とは

定義

 筋萎縮は,筋肉のやせを意味し,個々の筋線維,または線維束の容積が部分的に減少する現象である.通常は筋脱力(筋力低下)を伴う.

患者の訴え方

 主訴は多彩で,「筋肉がやせた」「細くなった」という筋萎縮の訴えもあるが,一般には「手指が使いにくい」「話しにくい」「食べ物が飲み込みにくい」などの筋脱力を訴えるほうが多い.その他,筋肉痛(自発痛,運動時痛,圧痛),筋痙攣,筋線維束攣縮,脱力発作,複視,嚥下障害なども訴える.さらに,発熱,体重減少,慢性肝炎様症状,関節炎様症状,消化器症状,頻脈,徐脈,心症状(不整脈,心不全),自律神経症状などが前景に立つことも少なくない.

患者が筋萎縮を訴える頻度

 幼児期から思春期までは,遺伝性の末梢神経,筋疾患によることが多い(進行性筋ジストロフィーなど).成人発症の全身性筋萎縮には運動ニューロン病,筋緊張性ジストロフィーなどが多いが,局所性としては,頸椎症,単神経障害などが多い.

 筋萎縮性側索硬化症などの運動ニューロン病の有病率は,人口10万人に対して4〜5人といわれている.

症候から原因疾患へ

病態の考え方

(図1)

 筋萎縮は,大脳皮質から筋肉に至るまでの経路のいずれかの障害で起こり,原因はさまざまである.しかし,筋萎縮のみから分けると,脊髄前角細胞から神経根,末梢神経までの障害による神経原性筋萎縮(neurogenic muscular atrophy)と,筋肉自体の障害による筋原性筋萎縮(myogenic muscular atrophy)がある.神経原性筋萎縮は末梢神経,神経根,脊髄前角運動神経細胞障害で発症する.一方,筋原性筋萎縮は,筋蛋白や筋膜異常による筋ジストロフィー,炎症細胞浸潤,血管炎などの炎症性ミオパチー,内分泌障害を含めた代謝性ミオパチーや,免疫異常および中毒による神経筋接合部の障害が原因になる(図2).神経筋接合部の

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