診療支援
診断

心肺停止
cardiopulmonary arrest(CPA)
柳田 国夫
(東京医科大学茨城医療センター集中治療部 部長)

心肺停止とは

定義

 心肺停止とは,心臓と肺の機能が停止している状態を示し,心停止とほぼ同様に用いられる.心臓が電気的に動いていても,有効な心拍出量がなく,頸動脈の拍動が触知されなければ臨床的に心肺停止と定義される.

 したがって,心肺停止の心電図波形は,心臓が動いていない(停止している)心静止(asystole)のほかに,心臓のポンプ機能が消失し脈拍が触知されない心室細動(ventricular fibrillation; VF),無脈性心室頻拍(pulseless ventricular tachycardia; 無脈性VT),無脈性電気的活動(pulseless electrical activity; PEA)という合計4種類が存在することになる.

 PEAは,心電図上はなんらかの波形を認めるが,有効な心拍動がなく脈拍を触知できない状態で,心室細動,無脈性VTではないものを指す.すなわち,厳密には心室筋の収縮が消失していなくても,頸動脈など主要動脈で脈拍が触知できない場合は心停止であり,分類上はPEAである.原因として,心室の収縮を妨げる病態,たとえば循環血液量減少,低酸素血症,心タンポナーデなどの存在が考えられ,一般的な心肺蘇生(cardiopulmonary resuscitation; CPR)と同時に原因疾患の検索とその治療を要することが多い.

 心停止時には呼吸は停止しているが,突然の心停止から数分の間,口を開けたままで呼吸をするかのように,顎・頭・首を動かす動作を示す.これは死戦期呼吸といわれ,死の直前のあえぎ呼吸を指す.胸と腹部が動いていなければ死戦期呼吸と判断できる.反応がなく(意識がなく),無呼吸あるいはあえぎ呼吸(死戦期呼吸)で確認される心臓機能の機械的な活動の停止も心肺停止に含まれる.

患者の訴え方

 心肺停止時には患者の意識はなく,患者の訴えはない.何も訴

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