意識障害とは
定義
意識障害とは,なんらかの(病的な)原因で意識の明るさ(覚醒度)の低下,あるいはその内容(思考,判断,記憶などの能力)の障害された状態を指す.脳に一次的な原因を有する場合と,脳以外に原因があり二次的に脳機能の障害される場合がある.
意識障害の程度により,深昏睡から意識の変容まで,さまざまな病態が存在する.表1図に急性意識障害の程度を表す用語を示す.
これらは定性的であいまいな部分が多いので,救急医療の臨床の場面では,定量的で客観性のある表2図に示すJapan Coma Scaleや,表3図に示すGlasgow Coma Scale(GCS)による意識障害の分類がよく用いられる.
患者の訴え方
一過性の場合を除き,意識障害を患者自らが訴えることはない.表2図,表3図の評価とともに,実際の患者の状態についての具体的な記録が重要である.
意識障害の頻度
意識障害を生じた原因疾患の種類により,頻度,性差は異なる.救急外来患者における急性意識障害の原因として,神経疾患は約30%にすぎず,中毒,外傷,精神疾患,内分泌代謝異常など多種の要因が関与している.
症候から原因疾患へ
病態の考え方
(図1)図
意識障害を考える際,病因診断,程度の把握,病変部位診断の3つが基本的に重要である.
原因疾患の推測は,情報が限られる場合も多いが,可能なかぎり病歴や服用薬物,意識障害を生じた場所などの状況を救急隊員もしくは患者家族などから聴取する.たとえば,患者のおかれていた環境や状況から,環境因子や中毒などの原因を推定する.既往歴や現病歴から,意識障害を起こす原因となる疾患の可能性を考慮する.突然の発症であれば脳血管障害の可能性が高い.
程度の把握には,先に述べたJapan Coma Scaleなどを用いて評価を行う.
病変部位の診断では,病歴情報や身体所見を参考とし,項部硬直や片麻痺,痙攣の有無