診療支援
診断

脳血管障害
cerebrovascular disease(CVD)
根本 繁
(関東労災病院 院長/東京医科歯科大学 名誉教授)

脳血管障害とは

定義

 脳血管障害とは,脳血管に病変があり,その結果,脳および脳神経の症状をきたす疾患の総称で,一般的には脳卒中と呼ばれている.

 かつてはわが国の死亡原因の第1位であったが,悪性腫瘍,心疾患に次いで第3位になり,最近は肺炎と脳血管障害がほぼ同じ頻度となっている.脳血管障害による死亡数は相対的に減少しているが,患者数は減少していない.要介護5のいわゆる寝たきり患者の半数は脳血管障害であり,わが国の医療において非常に重要な疾患の1つといえる.

 脳血管障害は時間との勝負で,“Time is brain”ともいわれ,迅速で適切な診断が患者の予後を左右する.脳血管障害は,出血性疾患,虚血性疾患,その他の疾患に分類できる.出血性疾患ではくも膜下出血と脳出血,虚血性疾患には脳梗塞がある.

患者の訴え方

 「頭痛」は最も多い訴えの1つであり,「頭が痛い」「頭が重い」「締めつけられるように感じる」「頭がズキズキする」から,痛む部位は「頭全体が痛い」「後頭部が痛い」「左半分が痛い」という訴えまでさまざまで,なかには「片頭痛がする」と自分で診断をつけている場合もある.

 「手足がしびれる」という訴えも非常に多い.「手(足)に力が入らない」筋力低下なのか,「感覚が鈍い」知覚低下なのか,「ピリピリ感じる」感覚異常なのか,訴えの範囲は多岐にわたる.

 「ろれつが回らない」「ものが見えにくい」「ものが二重に見える」などの訴えは明らかな神経症状として重要な所見である.

 「気持ちが悪い」「めまいがする」「体がふわーっとする」などといった不定愁訴のような訴えも多い.

患者が脳血管障害を訴える頻度

 くも膜下出血ではほぼ全例が頭痛を訴えるが,頭痛を訴える患者でくも膜下出血の頻度はきわめて低い.脳血管障害の疾患によりそれぞれ訴えは異なる.

症候から原因疾患へ

病態の考え方

(図1)

 くも膜下出血では,くも膜下腔に出血

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