診療支援
診断

終末期の諸症状
common symptoms in palliative care
清水 敦
(自治医科大学緩和ケア・消化器一般移植外科 教授)

 緩和ケアの対象は癌・非癌に限らず生命を脅かす疾病を患った患者・家族とされるが,本項では主に終末期の癌患者にみられる諸症状につき解説する.

Ⅰ 疼痛

疼痛とは

定義

 疼痛は「実際の組織損傷もしくは組織損傷が起こりうる状態に付随する,あるいはそれに似た,感覚かつ情動の不快な体験」と国際疼痛学会により定義されている.

患者の訴え方

 侵害受容性疼痛としての「痛み」のみならず,神経障害性疼痛では「しびれ」「電気が走るような感じ」「焼ける感じ」と表現されることもある.

患者が疼痛を訴える頻度

 進行癌患者が疼痛を訴えるのは85%に上るとされる.

症候から原因疾患へ

病態の考え方

 癌患者にみられる疼痛には,以下の3つがある.

①癌による痛み

②癌治療に関連する痛み

③癌とは直接関係がないと考えられる痛み

 ①「癌による疼痛」の場合,疼痛をきたす責任病変(原発性腫瘍,転移性腫瘍)が存在するのか,存在するならその部位,大きさ,周囲組織への浸潤はどうか確認する.

 術後の疼痛や薬物によるしびれなど,②「癌治療に関連する痛み」が治療後に時間が経過しても遷延する場合がある.

 併存疾患である変形性関節症や帯状疱疹など,③「癌とは直接関係がないと考えられる痛み」が発症する可能性も考慮する.

疼痛の機序による分類

●侵害受容性疼痛(体性痛,内臓痛)

●神経障害性疼痛

●その他(中枢性疼痛など)

 侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛とが混在することもある.

 頻度は高くないものの,アロディニア(触るなど通常は疼痛をきたさないとされる程度の刺激でも著しい疼痛を生じること)が認められることもある.

診断の進め方

診断の進め方のポイント

●TNM分類に基づき,癌の広がり診断をする.

●組織障害をきたす病変が存在するのか,それはどの臓器のどの場所か(患者が疼痛を訴えてもその責任病変を同定しえない場合がある).

●責任病変が同定されたら,どのような機序により疼痛を

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