現病歴:下血の精査の結果,大腸癌と診断され,消化器外科にて右結腸の摘出手術が施行された.以降,術後縫合不全,感染症などのさまざまな合併症を併発し,辻褄の合わない言動や興奮状態がみられるようになった.不眠に対して使用されたゾルピデム服用後に夜中にベッド柵を投げようとしたり,「手を出すな」などといい興奮するような状態がみられたため,診断,加療目的にて,精神科に紹介となった.
既往歴:特記すべきことはない.
病前性格:穏やかだがやや神経質な面もある(家族の弁).
生活歴:60歳で車部品製造会社を定年退職.その他,特記すべきことはない.
家族歴:特記すべきことはない.
初診時所見:外科病棟への往診時,自身で,今後の状態への不安,腰部の痛み,不眠などを訴えた.初診時には場所,時間などの見当識はおおむね保たれていたが,一方でややぼんやりしており,集中力の保持は難しいようであった.また,当科への紹介の直接の契機となった前日の深夜の出来事に関しての記憶はないようであった.
身体所見:身長165cm,体重60kg,脈拍90回/分(整),血圧142/80mmHg,SpO2 98%.感染症(炎症反応および発熱),低ナトリウム血症,低栄養(低蛋白血症),貧血,疼痛などの存在が確認された.
家族からの情報:今回の手術以前には,認知症をうかがわせるような症状あるいはそのほかの特記すべき精神症状もみられなかったことが明らかになった.
【問題点の描出】
認知症がない高齢患者の身体状態悪化に伴い急性,亜急性に注意障害と意識障害を伴う多彩な精神症状が発現した.
診断の進め方
特に見逃してはいけない疾患
・脳炎・脳血管障害
・重症感染症
・播種性血管内凝固(DIC)
・血糖異常
原因として頻度の高い疾患
・侵襲の高い術後
・貧血
・低栄養
・薬物性(ベンゾジアゼピン系薬物,オピオイド,副腎皮質ステロイド,抗コリン薬など)
この時点で何を考えるか?
医療面