診療支援
診断

左目の一過性失明発作
68歳 男性
小林 祥泰
(小林病院 理事長)

現病歴:糖尿病,脂質異常症,高血圧,脂肪肝で通院.内服治療を継続していたが,最近ずっと多忙で食事療法や運動も不十分でHbA1cが8.5%前後とややコントロールが悪化していていた.2か月前から,日中に急に左目が10秒くらい見えなくなる発作が毎日のように出現したが,手で擦るとまもなく回復するのであまり気にせず,主治医にも報告しなかった.車の運転もしていた.4日前から右上肢の数秒間の脱力発作が日に1回程度起こるようになったが,これもほかに脱力なく手を振ると改善するので様子をみていた.しかし,昨日から日に数回と回数が増えたため,さすがに不安になり受診.これらの症状を初めて訴えたため病状が判明した.

既往歴:特記すべきものはない.

生活歴:旅館業経営,1年前から新館増築のため多忙.飲酒は日本酒2合/日,喫煙20本/日.

家族歴:父親に糖尿病あり.

身体所見:意識は清明.身長170cm,体重90kg,腹囲110cm,脈拍72回/分(整)(左右差なし),血圧146/90mmHg,呼吸正常,SpO2 94%(room air).ラ音なし,心雑音なし.血管雑音なし.圧痛なし,肝,脾触知せず.浮腫なし.歩行正常.四肢筋力正常.運動失調なし.温痛覚正常.踵で振動覚軽度低下.上肢と膝蓋腱反射正常.アキレス腱反射両側低下.

【問題点の描出】

糖尿病,脂質異常症,高血圧で加療中の68歳の男性.左目の失明発作を頻回に繰り返し,最近は右上肢の脱力発作も繰り返すようになった.

診断の進め方

特に見逃してはいけない疾患

・一過性脳虚血発作(TIA)

・急性緑内障発作

頻度の高い疾患

・一過性脳虚血発作(TIA)

この時点で何を考えるか?

医療面接と身体診察を総合して考える点

 単眼の一過性視野欠損発作をみたらまず眼動脈を介した網膜中心動脈の塞栓を疑う.加えて右上肢の一過性脱力発作は中大脳動脈穿通枝領域の塞栓を疑う.両者が起こりうるのは同側

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?