診療支援
診断

めまい
62歳 男性
有竹 洵
(島根大学医学部附属病院・高度脳卒中センター)
長井 篤
(島根大学医学部内科学第三 教授)

現病歴:入院日午前,仕事中に突然めまい,頭痛が出現し立位困難となった.嘔吐もあり,同僚によって救急要請されて発症から5時間程度で受診した.

既往歴:特記事項なし.内服薬なし.外傷歴なし.

生活歴:職業は18歳から鳶職.喫煙は1日20本.飲酒は1日ビール350mL.

家族歴:特記事項なし.

身体所見:意識は清明.身長170.0cm,体重63.5kg,血圧135/92mmHg,脈拍63回/分,SpO2 97%(室内気),体温36.6℃.心音は不整.頸動脈雑音を認めなかった.言語は嗄声を認めた.視野欠損なし.右眼瞼裂狭小を認めた.瞳孔径は1.0/2.5mmで対光反射は右で消失.眼球運動制限はないが,左回旋性の自発眼振あり,注視時にも左眼振は残存した.頭位変換で眼振の方向は変化しなかった.顔面の運動は正常.顔面温痛覚は右で低下を認めた.軟口蓋は右で挙上不全あり.運動ではBarré(バレー)徴候,Mingazzini(ミンガツィーニ)徴候は陰性,四肢の粗大筋力に低下を認めなかった.深部腱反射は正常,病的反射は認めなかった.感覚では温痛覚は左上下肢で低下を認めた.粗大触圧覚・振動覚・位置覚は正常.協調運動は右で測定障害を認めた.歩行は不能であった.排尿障害,排便障害,発汗障害は認めなかった.

【問題点の描出】

特に既往のない中年男性.突発発症の眼振のほかに,頭痛,Horner(ホルネル)症候群,交叉性感覚障害,運動失調,嗄声を認めている.

診断の進め方

特に見逃してはいけない疾患

・脳梗塞

・脳出血

・くも膜下出血

頻度の高い疾患

・動脈解離

この時点で何を考えるか?

医療面接と身体診察を総合して考える点

 めまいを主訴に受診する患者の多くは眼振を伴っており,その種類が病態および病巣の推定に役立つ.また,中枢性の場合には眼振以外の神経学的異常所見を認める場合が多く,特に立位不能な程度に症状が強い場合には積極的に神経学

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