現病歴:起床時に鼻出血を認めたが,しばらくして止血したため,そのまま仕事に向かった.昼食後にも出血したが,このときもしばらくして止血した.帰宅し,夕食を食べたあとにテレビを見ていたところ,また鼻出血を認めた.しばらく様子を見ていたが,なかなか止血しないために,救急要請して来院.
既往歴:高血圧,脂質異常症,狭心症(抗凝固薬内服中).
生活歴:喫煙は20本/日,40年間.飲酒は機会飲酒.
家族歴:父が心筋梗塞.
身体所見:中肉中背,やや肥満傾向.
【問題点の描出】
もともと高血圧があることに加えて,狭心症に対して抗凝固薬を内服中であることから,易出血性で止血困難な可能性が示唆される.
診断の進め方
特に見逃してはいけない疾患
・高血圧,さらに狭心症で抗凝固薬内服中の状態
・鼻副鼻腔の良性・悪性腫瘍
・Osler(オスラー)病
頻度の高い疾患
・高血圧に伴う鼻出血
・抗凝固薬内服中で,出血しやすい状況での鼻出血
・アレルギー性鼻炎の合併,鼻かみなどの物理的刺激に伴う鼻出血
この時点で何を考えるか?
医療面接と身体診察を総合して考える点
高血圧があることに加えて,狭心症に対して抗凝固薬内服中であり,来院までにかなりの出血を生じている可能性,また止血困難な状況にあることが考えられる.血液をみると怖くなり,上を向いてしまい,血液を多量に飲み込んでしまっている可能性も考えられる.急に血液を嘔吐したり,迷走神経反射を生じたりすることを考え,点滴の確保やバイタルサインの確認をまず行う必要がある.
そのうえで,出血の程度についてある程度推測しつつ,診察を始める.Kiesselbach(キーゼルバッハ)部位からの出血かどうかを確認するとともに,出血点が前鼻孔からはわからない,出血が多くて視野が確保できない場合は,すぐに耳鼻咽喉科に相談することも考える.あまりに出血が多い場合は,処置時の手助けや急変時の対応を考えて,人手の確保も