診療支援
診断

悪心・嘔吐
64歳 女性
目黒 高志
(北海道消化器科病院内科 院長)

現病歴:3日前から倦怠感・悪心・嘔吐があり,食事がとれず歩行困難があるとの訴えで休日当番医を受診,同院にて茶褐色の嘔吐を認め,消化管出血疑いにて消化器2次救急当番である当院に紹介となった.

既往歴:25歳時より糖尿病,その後高血圧症・脂質異常症にて近医通院中.糖尿病はインスリン治療していたが食べられないため3日間使用を控えていた.

生活歴:飲酒・喫煙なし.

家族歴:特記すべきことはない.

身体所見:血圧174/90mmHg,脈拍151回/分,呼吸数32回/分(深大性),SpO2 97%(room air).意識は呼名に返答するが視線が合わない,呂律不良あり.麻痺なし.

【問題点の描出】

コーヒー残渣様嘔吐あり,上部消化管出血を疑われ搬送となった症例.糖尿病にて通院中で数日来の食欲不振・悪心のためインスリンを休薬している.軽度の意識障害あり.血圧上昇・頻脈・頻呼吸を認める.

診断の進め方

特に見逃してはいけない疾患

〈p〉高血糖緊急症〔糖尿病性ケトアシドーシス(diabetic ketoacidosis; DKA),高血糖高浸透圧症候群〕

・脳血管障害

頻度の高い疾患

〈p〉上部消化管出血〔急性胃粘膜病変(AGML),胃・十二指腸潰瘍,胃癌など〕

・腸閉塞

・胆石発作

この時点で何を考えるか?

医療面接と身体診察を総合して考える点

 数日来の悪心と茶褐色嘔吐にて紹介,上部消化管出血があり,その原因検索が必要な病態である.血圧・血液検査にて貧血・出血性ショックの有無を診断,嘔吐の原因として消化管の通過障害の有無をチェックする.

 意識障害はあるが頭痛・麻痺はなく,脳血管障害はやや否定的である.

‍ 糖尿病治療歴があり,sick dayのためインスリンを中断しており,採血にて貧血の有無とともに血糖の状態・脱水・電解質異常の有無を調べる.

診断仮説(仮の診断)

上部消化管出血

高血糖緊急症

必要なスクリーニング検査

●血

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