現病歴:4か月前から食欲不振と嘔吐があり,体重が26kg減少したとの訴えで受診した.腹痛はない.
既往歴:20年前に脳幹梗塞.後遺症なし.降圧薬・抗血小板薬を服用していたが10年くらい服薬していない.造影剤アレルギーあり.
生活歴:飲酒(−),喫煙(+),20歳より1日15本.
家族歴:特記すべきことはない.
身体所見:身長178cm,体重64.7kg,体温36.7℃.結膜貧血なし.腹部平坦,圧痛・自発痛なし.
【問題点の描出】
4か月前から食欲が低下した結果,26kgの体重減少をきたした症例.食欲低下の原因は過食時のつかえ感・嘔吐のためらしい.
診断の進め方
特に見逃してはいけない疾患
・消化器的要因として,〈p〉上部消化管通過障害をきたす疾患(胃癌・十二指腸癌など)
・非消化器的要因として,比較的長い経過で食欲不振・体重減少をもたらす疾患(内分泌疾患,精神神経疾患など)
頻度の高い疾患
・〈p〉胃癌などの消化管悪性腫瘍
・腸閉塞
・〈除〉肝機能異常・糖尿病ほかの代謝疾患
この時点で何を考えるか?
医療面接と身体診察を総合して考える点
悪性疾患を念頭に上部消化管の通過障害の有無を第一に検索する.
体重減少・食欲不振をきたす全身疾患・代謝疾患がないかどうか,血液・生化学的検索を行う.
診断仮説(仮の診断)
・上部消化管通過障害(癌をはじめとする狭窄病変)
・除外診断として上記非消化管疾患
必要なスクリーニング検査
●血液・生化学検査(貧血・低栄養の有無,肝機能異常・電解質異常の有無).
●上部消化管内視鏡検査.
●腸閉塞除外のための胸腹部CT.
検査結果
血液所見:WBC 10,900/μL,RBC 412万/μL,Hb 11.3g/dL,Plt 34.5万/μL,TP 5.5g/dL,Alb 3.2g/dL,Fe 27μg/dL,TC 129mg/dL,TG 81mg/dL,FPG 103mg/dL,HbA1c 5.1