診療支援
診断

肛門・会陰部痛
75歳 男性
芥田 壮平
(東京医科歯科大学大学院消化器外科学)
絹笠 祐介
(東京医科歯科大学大学院消化管外科学 教授)

現病歴:数年前より排便時に肛門・会陰部痛があった.症状が増悪傾向のため受診した.

既往歴:真性多血症,高血圧症.

内服歴:バイアスピリン®

生活歴:喫煙歴はなし.飲酒歴は機会飲酒.

家族歴:特記すべきことはない.

身体所見:視診;皮膚に明らかな病変は認めない.直腸診;肛門縁より1cmの肛門管右壁に疼痛を伴う腫瘤を触知する.肛門鏡診;同部位にびらんを伴う腫瘤を認める.

【問題点の描出】

数年前から排便時の肛門・会陰部痛があり,増悪傾向であったため受診した.直腸診にて疼痛を伴う腫瘤性病変を触知した.

診断の進め方

特に見逃してはいけない疾患

・肛門管癌

・痔瘻癌

・悪性黒色腫

・基底細胞癌

・Fournier(フルニエ)壊疽

頻度の高い疾患

・裂肛

・外痔核

・痔瘻

・肛門周囲膿瘍

・肛門潰瘍

・膿皮症

・粉瘤

・単純・帯状疱疹

この時点で何を考えるか?

医療面接と身体診察を総合して考える点

 肛門・会陰部痛をきたす疾患は,消化器科疾患,泌尿器科疾患,産婦人科疾患,皮膚科疾患,整形外科疾患と多岐にわたる.〈p〉まず緊急性のある疾患を考えることが原則である.緊急性の疾患はFournier壊疽が挙げられるが,そのほかは基本的に緊急を要する疾患は少ない.

 また,〈p〉慢性的な経過で致命的になりうる疾患として悪性腫瘍は必ず鑑別に入れる必要がある.悪性腫瘍が否定的であれば,〈p〉頻度の高い疾患から鑑別していく.器質性疾患が否定的であれば,肛門挙筋症候群などの機能性疾患を考える.

 本症例は〈除〉会陰部に発赤,腫脹,疼痛などの所見はなく,Fournier壊疽は除外される〈p〉慢性の経過で身体診察にて疼痛を伴う腫瘤性病変を認め,この肛門管病変が疼痛の原因と推測される肛門管癌の可能性を念頭におき,裂肛肛門潰瘍外痔核と頻度の高い疾患を鑑別に入れ,診察を進める.

診断仮説(仮の診断)

肛門管癌

・裂肛

・肛門潰瘍

・外痔核

必要なスクリーニング検査

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