診療支援
診断

排尿障害
72歳 男性
船曳 和彦
(順天堂大学医学部附属順天堂東京江東高齢者医療センター腎・高血圧内科 特任教授)
富野 康日己
(順天堂大学 名誉教授/医療法人社団松和会 理事長)

現病歴:5年前より頻尿あり.近医から投薬を受けていたが,近頃は排尿困難傾向であった.健康診断で腎機能障害が指摘されたため当科受診となった.

既往歴:特記すべきことはない.10年前より高血圧症治療中.

生活歴:レストラン配膳勤務.喫煙は70歳まで20本/日.飲酒歴なし.

家族歴:両親が高血圧症.

身体所見:意識は清明.身長171cm,体重51kg,脈拍80回/分(整),血圧124/78mmHg.心音・呼吸音に異常は認めない.下腹部は膨隆・硬で,下肢に浮腫は認めず.

【問題点の描出】

若いときは健康だった72歳男性.加齢とともに高血圧を指摘され加療されていたが,慢性経過の排尿障害の出現後,健康診断にて腎機能低下を指摘された.下腹部は膨隆し,硬い.

診断の進め方

特に見逃してはいけない疾患

・前立腺疾患

・下部尿路結石

・神経因性膀胱

・中枢神経障害

頻度の高い疾患

・尿路感染症

・加齢

・骨盤手術後

・薬物(感冒薬,抗うつ薬など)

この時点で何を考えるか?

医療面接と身体診察を総合して考える点

 排尿障害で受診した患者に対しては,まず〈p〉緊急の排尿処置を要する状態であるかを判断する必要がある.

 この患者の場合,排尿障害は慢性的であったが,急性尿閉を訴える患者では触診で膀胱の膨隆や超音波検査にて尿閉状態であることが確認できれば,導尿などで緊急の状態を脱してから検査を進めていく.

 排尿障害は,尿排出障害の程度により排尿困難残尿尿閉などに分けられる.また,蓄尿障害として尿失禁もあり,頻度の高い疾患である.発症様式〔急性の受診なのか,慢性的な排尿困難での受診なのか,腰痛や背部痛(叩打痛)を伴っているのか,腎機能障害に伴う異常を指摘されているか〕を正確に聴取し,排尿障害に随伴する症状や所見を詳しく取り上げることにより,原因疾患を絞り込むことが可能であるため,医療面接が重要である.

‍ 〈p〉この患者の排尿障害は慢性的に経過

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