診療支援
診断

感覚障害・感覚異常
45歳 男性
青山 淳夫
(島根県立中央病院神経内科 部長)

現病歴:半年前の秋から両足先が冷たく感じていた.徐々に範囲が上昇し,足首のだるさも春先になって出てきた.両下肢に浮腫も出てきたため,近医から紹介され受診.仕事で長時間正座をする.

既往歴:高血圧症,脂質異常症,高尿酸血症.

生活歴:職業は仏教関係,喫煙はなし,飲酒はなし.

家族歴:特記すべきことはない.

身体所見:脳神経に異常なし.左右上下肢運動麻痺なし.感覚は上肢顔面正常で,右下腿前面から母指まで,左下腿は外側から母指まで膜が張った感じあり表在感覚低下.足底は両側ともピリピリする異常感覚あり.振動覚は足関節正常で,母指は右優位の低下.腱反射は上肢(+/+),下肢(±/±).病的反射なし.両下腿浮腫軽度.体毛は剛毛で多毛.

【問題点の描出】

緩徐に進行する感覚障害があり,浮腫や多毛を伴い,運動麻痺は目立たない.

診断の進め方

特に見逃してはいけない疾患

・慢性炎症性脱髄性多発根神経炎(CIDP),抗MAG抗体陽性ニューロパチー

・アミロイドーシス

・POEMS症候群

・悪性リンパ腫,傍腫瘍症候群

頻度の高い疾患

・糖尿病性などの感覚性ニューロパチー

・腰部脊柱管狭窄症,腰椎下部神経根症

この時点で何を考えるか?

医療面接と身体診察を総合して考える点

 時間軸で考えると〈p〉半年ほどの期間に緩徐に進行する両下肢感覚障害で,脳血管障害や外傷などの物理的ストレスによるものは考えにくい.免疫の関与を考えた場合,Guillain-Barré(ギラン・バレー)症候群のように〈除〉急速に増悪するものは考えにくい.CIDPのような〈p〉ゆっくり進行するものなら可能性がある.腰部脊柱管狭窄症腰椎下部神経根症はかなり緩徐な場合と急性増悪のような形をとるときがある.傍腫瘍症候群POEMS症候群アミロイドーシスなどはじわじわ悪くなってくるので,本症例とは合致しやすい.

 疾患の解剖学的分布で考えると第4腰椎(L4)から第1仙椎(

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