診療支援
診断

手がふるえる,手が使いにくい
78歳 女性
三瀧 真悟
(大田市立病院神経内科 部長)
長井 篤
(島根大学医学部内科学第三 教授)

現病歴:2年前から右手のふるえを自覚した.その後徐々にふるえの程度が悪化し,手の使いにくさも出現したため受診した.

既往歴:食欲不振,慢性胃炎症状に対して近医からスルピリドが処方されている.

生活歴:農業に従事,喫煙飲酒はなし.

家族歴:特記すべきことはない.

身体所見:意識は清明.精神正常.眼球運動制限なし.やや小声だが構音障害はなし.顔面麻痺はないが表情は乏しい.右上肢に振戦を認め,振戦は安静時に強く,字を書く際は軽減する.両上肢に固縮を認める.椅子からの立ち上がりは自分で可能だが時間がかかる.歩行は前傾でやや小刻み.腱反射は正常.四肢の失調や筋力低下はない.その他一般身体所見に異常はない.

【問題点の描出】

2年前から緩徐進行性.安静時の振戦であり,固縮や動作緩慢も伴っている.失調や腱反射異常,四肢の筋力低下はない.スルピリドを内服している.

診断の進め方

特に見逃してはいけない疾患・頻度の高い疾患

・Parkinson(パーキンソン)病

・多系統萎縮症

・進行性核上性麻痺

・薬剤性Parkinson(パーキンソン)症候群

・本態性振戦

この時点で何を考えるか?

医療面接と身体診察を総合して考える点

 病気を診断するうえで,発症様式およびその後の進行経過は重要である.本症例は2年前に発症しその後緩徐に進行しており,慢性進行性の経過をとる疾患を鑑別する必要がある.

 振戦の鑑別を考えるうえでまず重要なのは,振戦がいつ起こるのか,つまり安静時か動作時かを確認することである.本症例は安静時に認める振戦であり,Parkinson病およびParkinson症候群の鑑別が必要になる.本症例は安静時振戦以外に筋緊張の異常(固縮)および動作緩慢を伴っているが,眼球運動制限や小脳失調はなく,錐体路障害を示唆するような腱反射異常も認めないことからParkinson病を考える.最後に薬剤性Parkinson症候群との鑑別

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