筆者は理学部化学科で分析化学などを学んだ後に医学部を卒業し,出身大学の附属病院精神神経科を出発点として精神医学を研鑽していました.ところが少しは診療能力に自信が芽生え始めた頃,出向先の某総合病院で受け持ちの入院患者が7階から飛び降り自殺を図ってしまいました.患者はただちに救急室に運ばれましたが即死の状態でした.外来診療中に呼ばれて救急室に駆けつけた私は何もできずに立ちすくむのみでした.私はこの患者さんの心も体も救うことができなかったのです.
この痛恨極まりない体験をきっかけに新たに救急医を志した私を,現在の職場に快く迎えてくださったのが,本書の監修者である相馬教授(当時の助教授)でした.当初は集中治療を中心に研鑽していたのですが,やがて相馬教授から「急性中毒を専門分野にしてみないか」と勧められました.そこで腎センターおよび腎臓内科をローテートして急性血液浄化法を学んだ後,相馬教授の指導を