診療支援
治療

4第1世代三環系抗うつ薬
上條 吉人
(北里大学特任教授・中毒・心身総合救急医学)

最初の10分メモ

含有する製品

・アミトリプチリン(アミプリン®,トリプタノール®,ノーマルン®)

・イミプラミン(イミドール®,トフラニール®)

・クロミプラミン(アナフラニール®

・トリミプラミン(スルモンチール®

・ノルトリプチリン(ノリトレン®


診断のポイント

・うつ病などの気分(感情)障害の病歴または第1世代TCAの服用歴のある患者に,昏睡,QRS時間の延長などの心電図異常,心室頻拍などの不整脈,低血圧を認める.

・Triage® DOAでTCA(三環系抗うつ薬類)が陽性となる.


治療のポイント

・QRS時間の延長,心室性不整脈,低血圧には炭酸水素ナトリウムを静注して血液のアルカリ化およびナトリウム負荷を行う.


Do&Don't

・初診時には中毒症状が乏しくても,急激な臨床症状の悪化が見られることに注意.

・Class 1aやClass 1c抗不整脈薬は,膜興奮抑制(キニジン様)作用によって,心室内伝導速度をさらに遅延させ,心筋収縮力をさらに減弱させるので禁忌.

・ClassⅡ抗不整脈薬(βアドレナリン受容体遮断薬)は,低血圧や心停止を促す可能性があるので禁忌.


体重50kgの実践投与量

・解毒薬・拮抗薬:QRS>0.10秒,心室性不整脈,低血圧には炭酸水素ナトリウム50~100mEqのボーラスによる静注を適宜繰り返し,血液をアルカリ化してpHを7.45~7.55とする.炭酸水素ナトリウムのボーラス投与の後は,4~6時間持続静注し,漸減する.


概説

 第1世代三環系抗うつ薬(以下TCA)は,うつ病を中心とした精神障害の治療薬として広く用いられてきた.しかしながら,第1世代TCAは,副作用が多いだけでなく,過量服薬による心毒性が強く,これまでに数多くの犠牲者を出した.近年,抗うつ薬は,抗コリン作用による口渇や便秘などの副作用が少なく,心毒性や中枢神経毒性の弱いSSRIやSNRIが主流

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