症候を診るポイント
●腰背部痛のred flagに注意.
●腰背部痛=整形外科疾患と早合点しない.
▼定義
腰背部痛は日常診療で上気道炎についで最もよく遭遇する主訴で,生涯罹患率は60~90%でありほとんどの人が経験する.どんなにがんばってもその原因がわかるのは15~20%であるといわれており,正確な診断にたどり着かないことがほとんどである.
▼病態生理
腰背部痛の原因疾患を表1-16図に示す.機械的損傷が原因のほとんどであるが数%に鑑別診断に挙げる怖い腰痛が隠れているため見逃さないように注意したい.
▼初期対応
腰背部痛患者で神経症状さえなければ問題ないと考えてはならない.表1-17図に挙げた感染症,癌では神経症状がでないこともあり,以下鑑別診断で述べるred flagを見逃さないようにしたい.
椎体圧迫骨折は痛いばかりでなく,寝たきりの主原因である大腿骨近位部骨折の危険因子としても非常に重要であり,圧迫骨折を見つけたら転倒予防,骨粗鬆症の治療などの策を講じることができる.
▼鑑別診断
原因疾患の鑑別である.ほとんどが非炎症性の機械的腰背部痛であるが,病歴聴取,身体・神経所見の把握,血液検査,画像検査などを適切な順序で活用し,腰背部痛のピットフォールとして表1-17図に挙げるred flagを参考にする.
➊病歴
表1-17図に挙げた見逃すと怖いred flagを念頭に問診する.
➋身体診察
1)視診
歩行,姿勢(側弯など),外側から脊椎のカーブをチェック.また,帯状疱疹がないかチェックする.
2)可動域
屈曲,伸展,回旋,側屈運動をみる.
3)触診
棘突起に圧痛がないか(外傷,感染),背部脊柱部に段違いがないか(圧迫骨折,すべり症など)を調べる.脊椎のレベルのだいたいの目安は,左右腸骨稜を結ぶ線はL4レベル,左右上後腸骨棘を結ぶ線はS2レベルと覚えるとよい.仙腸関節炎では,上後腸骨棘
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