症候を診るポイント
●患者が「関節が痛い」と訴えて来院した場合には,疼痛部位の評価,関節痛と関節周囲痛の鑑別,関節炎と非炎症性関節痛の鑑別を行い,関節炎が存在するかを確認する.
●単関節炎においては,化膿性関節炎を見逃さないことが重要である.単関節炎を認めた場合には関節穿刺を必ず遅滞なく行う.
●多関節炎の診断にはreview of systemと特徴的な身体所見の確認が重要である.
▼病態生理
患者が関節炎を呈している場合,なんらかの原因(細菌感染症,偽痛風・痛風などの結晶など)により関節内での炎症が引き起こされる.結果として体表面からは関節の腫脹と熱感が観察され,画像所見では関節の滑膜肥厚もしくは関節液貯留が確認される.
化膿性(細菌性)関節炎は,通常は無菌であるはずの関節内に感染微生物が侵入することで発症する.手術,外傷,咬傷などを原因として直接侵入する場合もあれば,遠隔の感染巣から血流を介して侵入する場合,隣接する皮膚などの感染創から侵入する場合などがある.病態としては感染微生物が関節液や滑膜において増殖し,白血球が関節に遊走して感染微生物を貪食し,白血球が自己融解する過程でリソソーム酵素の放出が起こり,さらに関節内の構造の破壊を招く.黄色ブドウ球菌による感染では関節軟骨が数時間~数日内に破壊されうる.
ウイルス性関節炎としては,ヒトパルボウイルスB19,B型肝炎ウイルス,C型肝炎ウイルス,風疹ウイルス,アルファウイルス(特にチクングニアウイルス)などが原因として挙げられる.一般的には多関節炎を呈し,数週の経過で自然寛解する.
痛風発作は,慢性的な高尿酸血症を背景として,壮年~高齢の男性を中心として,第1中足趾節(MTP)関節を好発部位とした単関節炎を呈することが多い.外傷などの結果として尿酸塩の結晶が微小痛風結節から放出され,炎症が生じ,免疫系によって異物と認識され