症候を診るポイント
●「発熱」は臨床的な概念であり,「体温が高い」という現象だけではなく患者が苦痛を感じている健康問題としてとらえるべきである.
●敗血症を見逃さないことが何よりも肝要.ワークアップとして,病歴/身体所見からの感染臓器のすみやかな特定,感染臓器からの培養検体取得とグラム染色施行,血液培養複数セット(2セット以上)を行い,抗菌薬を遅延なく投与することが望まれる.
●diagnostic clue(診断のカギとなる病歴や所見)はしばしば遅れて出てくるため,経時的な観察が必要となる.そのため,診断未確定例においては,繰り返しでの病歴聴取と身体診察を行うことが望ましい.
▼病態生理
「発熱」は臨床的な概念であり,「体温が高い」という現象だけにはとどまらない.内因性の病態に患者が苦痛を感じ,「発熱」という健康問題を有した状況で医療者の前に登場したという一連の過程を示していることが多い.
病態生理を簡単に述べると,正常範囲を超えた高い体温にあることを高体温症とよび,体外から過剰な熱が加わったり,熱放散が妨げられたりした場合に起こる受動的高体温症と,体温調節のセットポイントが高温側へシフトすることによって生じる能動的高体温症(いわゆる発熱)がある.
発熱は主に感染が発生したときに生じ,この際に発熱誘発物質が生体の体温調節機構に影響を与えることで,通常は37℃程度に設定されている体温が上昇する.
外因性発熱物質としての病原体,特にグラム陰性菌の細胞膜から放出されるリポ多糖体毒素(エンドトキシン)などが,視床下部体温調節中枢のセットポイントを上昇させる.細菌あるいはその分解産物が組織あるいは血液中に存在すると血液中の白血球,組織マクロファージ,キラーT細胞などにより貪食され,数々のサイトカインを放出する.内因性発熱物質としてのインターロイキン1,TNF-α,マクロファージ炎症蛋白(m
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