診療支援
治療

【5】嗄声
hoarseness
喜舎場 朝雄
(沖縄県立中部病院・呼吸器内科部長)

症候を診るポイント

●発症からの経過と随伴症状を確認する.

●喫煙歴があれば胸部単純X線写真は撮影する.

●頸部と前胸部の聴診は忘れずに.

▼定義

 声がかれている状態を指す.

▼病態生理

 声帯に炎症が生じると嗄声が生じる.慢性副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎などにより鼻汁が声帯に流れ込む後鼻漏が原因のこともある.咽頭の炎症の波及でも起こりうる.声帯にポリープができて物理的に影響して嗄声をきたす場合と声帯の機能不全で生じることもある.声の機能を司る迷走神経が障害を受けても嗄声を訴える.肺癌に伴う大動脈弓近傍の縦隔リンパ節腫大によって迷走神経が圧迫を受けると慢性の嗄声を引き起こす.

▼初期対応

 嗄声の原因となる疾患で致死的な疾患はあまりないが原因別に対応が異なる.声帯そのものの病態が考えられる場合には耳鼻科医や救急医によって喉頭鏡検査を施行して直接声帯を肉眼的に見て炎症,ポリープ,声帯の動きの左右差などを評価する.後鼻漏が原因と考えたら鼻炎・副鼻腔炎に対する抗アレルギー薬や抗菌薬を投与する.

 喫煙者で1か月以上の嗄声がある場合には肺癌の縦隔リンパ節腫大の可能性を考えて胸部単純X線写真を撮影して肺野の結節と大動脈弓レベルの縦隔の拡大を確認する.

▼鑑別診断

声帯ポリープ

 嗄声の経過が長く声が出しづらい,職業で声を使用する機会が多いときに疑う.

声帯機能不全

 若年女性や精神疾患を抱えた患者に比較的見られ気管支喘息と間違われることが多い.身体診察で頸部を最強点とする低調な連続性雑音を吸気中心に聴取することが多い.診断は肺機能検査でのフローボリューム曲線で吸気相が平坦化する,喉頭鏡検査で吸気時に声帯が閉じるような奇異性運動が見られれば診断となる.

食道カンジダ

 気管支喘息などで吸入ステロイドを定期吸入して,うがいが不十分な場合の副作用としてみられたり,全身性のステロイドの内服や細胞性免疫の低下した患者で嗄

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