診療支援
治療

【4】胸水
pleural effusion
皿谷 健
(杏林大学医学部付属病院・呼吸器内科准教授)

症候を診るポイント

●胸水ではLightの基準を用いて滲出性,漏出性の判断を行う.

●滲出性胸水の最も多い原因は悪性胸水,肺炎随伴性胸水/膿胸,結核性胸膜炎である.

●利尿薬の使用症例では胸水鑑別の補助診断を使用する.

▼定義

 胸腔内に胸水が増加した状態で,その多くは感染症,悪性腫瘍,膠原病,心不全,腎不全に由来する〔第2章のも参照〕.

▼病態・分類

 胸水貯留の正確な機序はいまだ不明な部分があるが,炎症性サイトカインの関与や血管透過性亢進の関与が考えられている.Light(ライト)の基準(表1-31)により滲出性胸水,漏出性胸水に分類できる.Lightの基準は,3つのうち1つでも陽性であれば滲出性胸水となるが,利尿薬の使用は胸水の濃縮を起こし偽陽性の原因となるため,補助診断を併用する.

▼鑑別診断

‍ 図1-12に診断プロセスを示す.

 胸水貯留が両側性であれば,低アルブミン血症,心不全,腎不全などによる漏出性胸水である可能性が高い.一方,片側性胸水は胸水穿刺を行い,胸水細胞診,一般細菌/抗酸菌培養,生化学的検査から,原因疾患を検索する.穿刺時には嫌気性菌の感染症,すなわち膿胸を示唆する嫌気臭の有無や,色調にも注意する.血性胸水は悪性胸水,結核性胸膜炎,膠原病を示唆する.胸水の自然消退は必ずしも疾患の治癒を意味せず,結核性胸膜炎やアスベスト曝露に伴う胸水(benign asbestos pleural effusion:BAPE)でも時々経験される.一般的には胸水中の総細胞数,LDH,総蛋白濃度は炎症とともに増加し,糖は減少する.胸水中のWBCのうち好中球は炎症早期または強い胸腔内の炎症の持続を示唆し,リンパ球の増加は慢性経過を示唆する.pH<7.2や胸水中の糖の著明な低値(<40mg/dL)は膿胸を示唆する所見で胸水ドレナージの絶対適応であるが,関節リウマチによる胸膜炎で同様の所見

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