症候を診るポイント
●黄疸も軽度であれば(総ビリルビン2.0~3.0mg/dLを超えないと)視診で観察できない.
●直接(抱合型)ビリルビン優位なのか間接(非抱合型)ビリルビン優位なのかにより鑑別が大きく分かれる.
●病態生理を考えながら,身体所見,ほかの検査結果をふまえて,生体に何が起こっているかを考える.
▼定義
黄疸はもともと身体所見から定義された言葉ではあるが,実臨床では総ビリルビンが1.0mg/dL以上を黄疸として取り扱う.
直接(抱合型)ビリルビン優位とは総ビリルビンの50%以上が直接(抱合型)ビリルビンであることである.
▼病態生理
ヘモグロビンのヘム部の酸化がビリベルジンを生成し,間接(非抱合型)ビリルビンとなり,アルブミンと結合する.
間接(非抱合型)ビリルビンは肝細胞でグルクロン酸抱合が行われ,胆汁内に排泄される.これを直接(抱合型)ビリルビンとよぶ.
直接(抱合型)ビリルビンは腸内に排泄後ウロビリノーゲンに転換される.また,ウロビリノーゲンは腸内で再吸収され,ウロビリンとして尿に黄色い色をつける.
また腸内でステルコビリンに転換され,便に褐色の色をつける.
間接(非抱合型)ビリルビンはアルブミンと結合しているため尿中には排泄されない.
よって,ビリルビン尿は直接(抱合型)ビリルビンの過剰によって起こる.
敗血症などのストレスによりビリルビンの産生が促進される.
▼鑑別疾患
黄疸の原因として,オランダの研究で,膵臓癌もしくは胆道癌が20%,結石が13%,アルコール性肝硬変が10%であった.鎌状赤血球症,臓器移植後を含む術後中心静脈栄養法(total parenteral nutrition:TPN)施行中,後天性免疫不全症候群(acquired immune deficiency syndrome:AIDS)患者に関しては,複合的な原因が黄疸を引き起こす傾向がある.