診療支援
治療

【3】便秘
constipation
北川 泉
(湘南鎌倉総合病院・総合内科・総合診療科部長)

症候を診るポイント

●原因となっている基礎疾患を見落とさない.

▼定義

 排便習慣には個人差が大きく,患者が便秘という言葉で意味する内容もさまざまである.医学的に便秘とは「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」と『慢性便秘症診療ガイドライン2017』で定義されている.

▼病態生理

 慢性便秘症は,食物繊維と水分の摂取不足,結腸の通過障害,肛門機能の異常によって生じる.これらは,腸管神経障害,特定の薬物,高齢,消化管を侵す多数の系統性疾患が原因で起こる.

▼初期対応

 初期対応で重要なのは,緊急に処置を要するかの判断を行うことである.強い腹痛,腸音の異常,嘔吐を伴う場合はイレウスを疑い緊急に対処する

 慢性便秘症の場合は,問診・身体診察を行い病状における病型分類を行う.原因は器質性と機能性に分けられ,症状から排便回数減少型・排便困難型に,病態から大腸通過正常型・大腸通過遅延型・便排出障害に分類している(表1-36)

▼鑑別診断

 大多数の患者は,がんやうつ病,甲状腺機能低下症などの基礎疾患はなく対症療法が主となる.しかし便秘に発熱・体重減少がみられる,排便習慣の急激な変化が認められる,下血,貧血を伴う,50歳以上を超える,大腸癌の家族歴があるなどのサインがみられたら,大腸内視鏡検査などの精査を勧める.

▼基本的治療方針など

 治療には保存的治療と外科的治療がある.保存的治療には食習慣を含む生活習慣の改善,摘便などの理学療法的治療,薬物療法が挙げられる.保存的治療では病状の改善を認めず,便秘の病態評価により適応がある場合は外科的治療が行われる.

 治療は内服薬が主体である.『慢性便秘症診療ガイドライン2017』では,浸透圧性下剤の投与はエビデンスレベル:A(強い推奨)と非常に高い.浸透圧性下剤のうち塩類下剤である酸化マグネシウム,クエン酸マグネシウム,硫酸マグネシウム

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