症候を診るポイント
●食欲不振は非特異的な症状であり,多彩な疾患に伴って出現する.随伴する症状や症候から原因疾患を考える.
●全身倦怠感も非特異的な症状である.これが,過重な労働・運動や精神的な負担から起こった生理的な反応なのか,それとも身体的疾患や心理・社会的な背景に伴う過度な倦怠感かどうかに注目する.
▼定義
食欲不振とは,空腹感を惹起する状況にもかかわらず,食物摂取/摂食に対する要求が減少や消失がみられること.
全身倦怠感は,身体的には筋力が低下するように自覚する脱力感のような状況を示し,精神的には患者自身の元気さの低下や活力・意欲の低下をきたす.生理的(運動,睡眠,ダイエット,ストレス),二次性(全身性疾患に併存),慢性(慢性疲労症候群)の全身倦怠感に分けられる.
▼病態生理
➊食欲不振
感染症・炎症・悪性腫瘍に伴う食欲不振は,免疫細胞が炎症性サイトカインを産生し,発熱や疼痛,食欲の抑制を引き起こす.神経性食欲不振症や気分障害(うつ病)におけるCRHの分泌の増加も視床下部における摂食の抑制に関与しているとされる〔第6章「神経性食欲不振症」の項(→)も参照〕.
➋全身倦怠感
明らかな病態生理は不明であるが,生理的な倦怠感は過度な運動,睡眠不足,ダイエット,ストレスなどから生じる.二次性の倦怠感は多彩な身体疾患や精神疾患に合併する(表1-39図).内分泌ホルモンやサイトカインの放出との関連が示唆される.
▼初期対応
食欲不振は慢性に経過することが多く,全身性疾患の随伴症状や気分障害などの精神的側面の症状として現れる.しかし,発現が急速でバイタルサインの悪化やその他の身体症状を伴う場合には,感染症や器質的な消化器疾患を含む急性疾患をまず除外する.
全身倦怠感はその訴えが生理的なものか,病的なものかをまず考える必要がある.生理的なものは睡眠や休息により改善する.病的な全身倦怠感には,