診療支援
治療

【10】吃逆(しゃっくり)
hiccups/singultus
北 和也
(やわらぎクリニック・院長)

症候を診るポイント

●バイタルサインや全身状態がよく,48時間以内のものであれば通常自然軽快が期待できる.

●重症度・緊急度の高い場合や持続性あるいは難治性吃逆の場合,原因となる疾患の鑑別が重要.

●吃逆がQOLに影響する場合があり,必要に応じ,非薬物・薬物的対応を要検討.

▼定義

 横隔膜(および肋間筋)の発作的・間欠的な不随意の収縮により吸気が生じ,それに続く突然の声門の閉鎖により特徴的な「ヒック」音を発する現象のこと.ほとんどが良性で1時間以内に自然軽快するが,時に長時間持続する場合がある.持続時間により,48時間以内を吃逆発作,48時間以上1か月未満を持続性吃逆,1か月以上を難治性吃逆と分類し,持続性・難治性では鑑別を要する.難治性吃逆の最長記録は,なんと約68年でありギネス世界記録に認定されている.

▼病態生理

 吃逆の病態生理や生理的意義は,完全には解明されていないが,さまざまな反射経路(反射弓)が関与するといわれている.横隔膜への刺激が求心路(横隔神経知覚枝,迷走神経など)を介し,中枢神経系〔脳幹(延髄,脳幹網様体),視床下部,第3~第5頸神経など〕に達し,遠心路(横隔神経運動枝など)を介して声門,呼吸筋に作用する.この経路のうちのいずれかが障害され,吃逆が引き起こされる.解剖学的に病変が指摘できない場合にも,代謝性疾患(例えば尿毒症や糖尿病など)や薬剤が,中枢神経や迷走神経,横隔神経などに影響し,吃逆が引き起こされることがある.また,吃逆のうち8割は左横隔膜に作用するという報告がある.

 一般的な原因として,過食,刺激物の摂取,炭酸飲料,空気嚥下(チューインガムや喫煙などによる),上部消化管内視鏡検査時の送気による胃の膨張などがある.その他,周囲環境温度や胃腸温度の急激な変化,過度のアルコール摂取,興奮や感情的ストレスなども原因になる.

 一方,持続性・難治性吃逆の場合は,緊

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