診療支援
治療

【11】吐血
hematemesis
篠浦 丞
(国際医療福祉大学教授・赤坂心理・医療福祉マネジメント学部)

症候を診るポイント

●出血源として,上部消化管のほか,気道も考慮する.

●ショックバイタル例,非代償性肝硬変などの臨床的高リスク例では,輸血や緊急内視鏡を含む迅速な対応が必要となることが多い.

●受診時にバイタルサインが安定していても,その後の再吐血で急変する場合がある(食道静脈瘤,動脈性出血).

●内視鏡では対応困難な「超重症例」の存在に留意する.

▼定義

 血液そのものか,その変性物質(コーヒー残渣様吐物)を吐くことをいい,出血源として上部消化管と気道(鼻腔,咽喉頭,気管,肺)が含まれる.

▼問診・身体所見・検査所見

問診

 併存疾患(易出血性をきたす非代償性肝硬変,特発性血小板減少性紫斑病,遺伝性出血性毛細血管拡張症),手術歴(腹部大動脈瘤に対する人工血管置換術),治療歴(食道癌,特に化学放射線療法),服薬歴(抗血小板薬・抗凝固薬・消炎鎮痛薬,非選択的β拮抗薬)を確認する.受診前最後の食事(last meal)時間を確認し6~8時間以内なら内視鏡施行時間の調整やエリスロマイシン静注(胃蠕動亢進)を考慮する(胃内容物嘔吐による誤嚥や不十分な内視鏡観察・処置対策).

身体所見

 非代償性肝硬変を示唆する,黄疸・腹水〔濁音界移動現象(shifting dullness)を伴う腹部膨満・カエル腹〕・手掌紅斑(palmer erythema)・下腿圧痕浮腫(pitting edema),血小板減少や機能低下を示唆する点状出血(petechiae)や口腔内出血(gum bleeding)に注意する.

検査所見

 出血後Hb濃度が低下するまで24時間以上かかる(血液希釈完成)ため,来院時Hb濃度低下がなくても直近の吐血による失血は否定できない.血中尿素窒素/クレアチニン比(BUN/Crea)上昇で上部消化管出血,MCV<80で慢性出血,MCV>100で葉酸・ビタミンB12欠乏を疑う.

▼初期対応

ショッ

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