症候を診るポイント
●腹水は病歴聴取である程度成因を絞り込むことができるため焦点を絞った問診が重要.
●病態を考える際には頻度の高い肝硬変に伴う腹水かそうでないかに分けて考える.
▼定義
腹水は腹腔内に貯留した液体を指す.通常は病的な状態を指すが,健常者でも20~50mLの生理的腹水が存在するといわれている.
▼病態生理
腹水の成因は大きく,①肝硬変が存在する場合と②存在しない場合,に分けて考える.
①の機序は諸説あるが近年では門脈圧亢進で末梢・内臓血管の拡張による有効循環血液量低下を原因とする末梢動脈拡張説などが知られている.
②の原因として癌性腹膜炎,結核などの腹膜感染症,膵疾患などが多い.成因は悪性腹水であれば,癌細胞由来の血管内皮細胞増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)などにより腹膜血管新生やその透過性亢進が生じること,腫瘍によるリンパ管閉塞などが挙げられる.
▼初期対応
腹水貯留に伴う疾患で初期対応を急ぐ疾患として多量の腹水により呼吸,循環障害を起こした状態,発熱や腹痛を伴う場合などが挙げられる.
▼鑑別診断
腹水の原因は肝硬変が最も多く,その他,心疾患によるもの,癌の腹膜播種などが続き,まれではあるが結核やクラミジア(Chlamydia trachomatis)などによる感染症,膵炎,ネフローゼ症候群,腹水尿などが原因となることもある.
病歴では飲酒量,輸血歴,肝炎ウイルスやHIVの危険因子,刺青,家族歴,結核の危険因子などを中心に問診する.
理学所見では浮腫を伴い腹部,特に側腹部の打診で濁音を呈する場合,腹水の存在を示唆する.体位変換により側臥位で濁音界の移動(shifting dullness)を確認できればより確実である.腹水の原因となる疾患を診断するため腹膜刺激症状,全身のリンパ節腫大,くも状血管腫,手掌紅斑,黄
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