症候を診るポイント
●肝腫大は病歴,症候,全身および肝臓の理学所見などによりその存在を疑う.
●身体所見による肝腫大の診断は時に精度を欠く場合もあるが画像診断とともに行うことでより精度を高めることができる.
▼定義
肝臓の大きさは身長やBMIなどの体格に依存するが,通常右鎖骨中線上で幅6~12cmである.肝腫大は肝臓の容積が異常に増大することを意味するが,触診や打診で肝腫大を疑った場合に画像検査などを用いて診断を進めていく.
▼病態生理
肝腫大は主に肝細胞の病理学的変化の結果として肝臓が腫大したものである.肝腫大の原因となる病態として,肝炎や肝硬変などの炎症,右心不全やBudd-Chiari(バッド-キアリ)症候群などのうっ血,胆道閉塞や原発性胆汁性胆管炎などの胆汁うっ滞,脂肪肝やWilson(ウィルソン)病などの代謝異常,肝腫瘍や造血器腫瘍などの腫瘤に分けられる(表1-45図).
▼初期対応
原因疾患を鑑別して,おのおのの病態に応じて治療を進めていくが,特に肝腫大に加えて黄疸や肝性脳症,腹水などの肝不全を呈する場合や,胆道閉塞を伴う状態,右心不全などは早急に対応する必要がある.
▼鑑別診断
肝腫大を認めたときの鑑別の進め方は,血液検査で肝機能異常を認めたときの鑑別の進め方と類似する.肝疾患の原因を病歴によって鑑別することと,理学所見により慢性肝疾患のほかの所見の有無を調べる.
病歴では飲酒量,輸血歴,肝炎ウイルスやHIVの危険因子,刺青,鍼灸,肝疾患の家族歴,海外渡航歴などを中心に問診する.
既往歴では肝疾患に加えて造血器や心疾患,膠原病,代謝性疾患など他臓器疾患について問診する.
臨床症状では肝疾患に伴う症状として全身倦怠感,食欲低下,悪心,嘔吐などの消化器症状,褐色尿や皮膚の黄染などの黄疸症状,脳症,腹水,浮腫,吐下血,瘙痒感などが挙げられる.
一方で,慢性肝疾患や初期の代償性肝