症候を診るポイント
●乏尿では腎尿路の異常を疑う.
●循環不全や尿閉など,急ぐ病態をまず確認する.
●腎前性,腎性,腎後性とわけるとわかりやすい.
▼定義
通常,健常者の尿量はおよそ500~2,000mL/日である.乏尿とは,尿の排泄量が低下し尿量が400mL/日以下となった状態のことを表す.また乏尿よりもさらに尿量が低下し,尿量が100mL/日以下となった場合を無尿とよぶ〔第9章の→も参照〕.
▼病態生理
1日の溶質摂取量は500~600mOsm/日程度(約10mOsm/kg/日)といわれており,溶質排泄に異常がなければホメオスタシスにより摂取量と同量の溶質排泄が必要となるはずである.一方で尿浸透圧は,ADHの異常反応などがなければ50~1,200mOsm/Lの範囲で調節することができる.
では1日に必要な最小尿量とはいくらであるか? 尿量を最小限にするにはすべての尿を最大濃縮尿で排泄すればよいわけだが,500~600mOsmの溶質を1,200mOsm/Lの尿で排泄するとなると,最低でも1日につき400~500mLの尿排泄は必要であるということがわかる.
これが乏尿の定義の大まかなcut offであり,もし1日の尿量がこれより少なければ溶質を排泄する過程に異常があるということであり,無尿はその重度の病態である.そしてその原因が尿生成過程の問題であれば腎機能に何らかの異常が生じているということであり,尿生成には問題ないが尿排泄過程に問題があるならば尿路の機械的異常が生じているということである.
なお,食欲不振などの治療中の患者においては溶質摂取がままならず,1日の必要溶質排泄量が低下している場合もある.その際には乏尿であっても腎尿路の問題はない可能性もある.
▼初期対応
尿量低下の原因として,出血や敗血症など全身性の疾患により血圧低下や体液量減少している場合と,尿路閉塞により排尿できて