診療支援
治療

【4】口渇
thirst
五十野 桃子
(筑波大学附属病院・総合診療科)

症候を診るポイント

●口渇があるときは,まず循環血漿量減少がないかを判断する.

●背景にある病態だけでなく個々の鑑別疾患を考えながら問診・身体診察を進めていく.

▼定義

 口渇とは,口の中や喉が渇き,水分摂取を求める感覚であると定義される.口渇は体の水バランスを維持するために重要な役割を果たす.

▼病態生理

 体の水バランスの指標である血漿浸透圧は,生理的に275~295mOsm/kgH2Oで維持されている.水の摂取と排泄によって調節されるが,前者は口渇によって,後者はADHの分泌によって調整される.

 血漿浸透圧上昇をきたすと,中枢性浸透圧受容器で感知され,情報が視床下部へ伝えられる.そこから渇中枢が刺激され口渇を生じて飲水行動を誘発し,他方でADH分泌を促す.ADH分泌促進は腎での水再吸収を増加させる.

 また,循環血漿量の減少があると,左心房や頸動脈,大動脈-右心房接合部に存在する圧受容器が感知し,視床下部へ伝達する.さらに,循環血漿量減少はレニン活性を促し,アンジオテンシンⅡの分泌が亢進することでさらに口渇が刺激される(図1-16)

 つまり,血漿浸透圧上昇と循環血漿量減少はともに口渇を促す.血漿浸透圧が280mOsm/kg H2O以上になるとその1~2%のわずかな変化を感知してADH分泌を促す.一方で,循環血漿量減少への反応は,細胞外液量が5~10%以上に低下しないと起こらない.

▼初期対応

 口渇を認める場合は,背景に循環血漿量減少がないかを判断する.循環血漿量減少や電解質異常により意識障害などをきたすこともあり,意識レベルやバイタルサインに注意して,血液検査などとともに輸液ラインを確保することもある.

▼鑑別診断

 前述の病態生理から口渇をきたす病態は,①血漿浸透圧の上昇,②循環血漿量減少,③ADH作用低下に分けられる.その他,④口腔内乾燥,⑤精神疾患も口渇の原因となりうる.

 血漿

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