診療支援
治療

【5】肥満
obesity
山本 由布
(筑波大学・地域総合診療医学)
吉本 尚
(筑波大学准教授・地域総合診療医学)

症候を診るポイント

●並存する健康障害がないか確認する.

●食習慣や運動習慣などの生活習慣を詳細に聴取する.

▼定義

 肥満とは,脂肪組織に中性脂肪が過剰に蓄積した状態で,日本ではBMI(body mass index)〔体重(kg)/身長(m2)〕≧25と定義されている.BMI≧35は高度肥満とよばれる.主に生活習慣に起因する原発性肥満と基礎疾患のある二次性肥満に分類される.

 さらに,肥満に起因ないし関連する健康障害(耐糖能異常,脂質異常症,高血圧,高尿酸血症・痛風,冠動脈疾患,脳梗塞,非アルコール性脂肪性肝疾患,月経異常・不妊,閉塞性睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群,運動器疾患,肥満関連腎臓病の11疾患)を合併するか,その合併が予測される場合〔内臓脂肪型肥満(ウエスト周囲長:男性≧85cm,女性≧90cmでスクリーニングし,腹部CTによる内臓脂肪面積≧100cm2で確定診断を行う)〕で減量を必要とする病態を肥満症と定義し,疾患単位として取り扱っている〔第6章「原発性肥満と二次性肥満」の項()も参照〕.

▼病態生理

 単純性肥満,肥満症の成因として,エネルギー摂取量過多,特に高糖質食と低蛋白食,早食い,重度飲酒,坐位時間の増加,テレビ視聴時間の増加,短睡眠時間,禁煙(特に喫煙曝露量が多い場合)などが考えられている.

▼鑑別診断

 病歴として,体重の推移や関連するイベント,食生活,運動習慣,ダイエット歴,薬剤使用歴,喫煙/禁煙歴,随伴症状の有無などを聴取する.身体診察は二次性肥満の鑑別に必要であり,甲状腺腫大(甲状腺機能低下症),満月様顔貌,中心性肥満,赤色皮膚線条など〔Cushing(クッシング)症候群〕,痤瘡,多毛症など(多囊胞性卵巣症候群)に留意する.

 肥満症の診断のため,合併の有無や,必要に応じて二次性肥満の鑑別も行う.二次性肥満は肥満の5~10%で認められ,内分泌性,遺伝性

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?