症候を診るポイント
●貧血の原因は4つ:出血,溶血,造血不全,体液量増加による希釈.
●バイタルサイン(頻脈,血圧低下など),身体所見(顔色,粘膜貧血など),病歴(動悸,息切れ,立ち眩み,下血,褐色尿など)を丁寧にとり,貧血を見逃さないこと.
●網赤血球(reticulocytes)比率は,貧血の鑑別診断に重要である.
▼定義
「赤血球あるいは血色素(ヘモグロビン:Hb),または両者が量的に減少し,その結果,組織への酸素運搬能力が低下した状態」である.赤血球の量的減少は,Ht(%)で評価し,Hbは,血中Hb濃度(g/dL)で評価する.Ht値とHb濃度の正常値は,性別によって異なり,一般に男性より女性において低値.
▼病態生理
赤血球量やHb量が減少すると,血液の単位体積あたり酸素運搬量が減少するため,人体は心機能を増加させて代償しようとする.よって,心拍数の増加や左室駆出率の増加が起こる.
また,貧血においては,一般に酸素解離曲線の右方移動が起こるため,単位重量あたりのHbに結合した酸素を抽出する酸素抽出率は増加する.これにより,末梢組織への酸素供給を代償しようとする.
酸素運搬能と酸素供給能は,以下の式によって表すことができる.
●酸素運搬能=Hb値(g/L)×1.35*(mL/g)×心拍出量(L/分)
*:Hb1gは約1.35mLの酸素と結合する.
●末梢組織への酸素供給量(mL/分)=酸素運搬能×酸素抽出率(20~30%)
この式により,たとえHb値の減少が軽度であっても心拍出量の低下があれば容易に組織低酸素状態に陥り貧血症状が出現することがわかる.
貧血が起こる要因としては,①出血,②溶血,③造血不全,④希釈の4つが挙げられる.
➊出血
月経,消化管出血は,出血による貧血の主な原因であるが,病院に入院中であれば頻繁に行われる採血によっても貧血が起こることがある.
➋溶血
血管内溶血と
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