診療支援
治療

【2】出血傾向
bleeding tendency
萩原 將太郎
(東京女子医科大学講師・血液内科)

症候を診るポイント

●出血の原因は,血管,血小板,凝固因子,線溶の異常.

●病歴,家族歴,服用している薬剤などについて詳しく聴取するとともに,身体診察にて皮下出血,筋肉内出血,関節出血,粘膜出血,歯肉出血など出血部位と所見(紫斑の場合,平坦か? 浸潤を触れるか? など)は,鑑別診断において重要な情報である.

▼定義

 特別な誘因がなく出血あるいはわずかな外力で出血する易出血状態を指す.

▼病態生理

 出血傾向にかかわる要素は,①血管とその周囲組織の脆弱性,②血小板数および機能,③凝固異常,④線溶の亢進である.

血管とその周囲組織の脆弱性

 血管とその周囲組織が破綻することにより出血が起こる.原因は,①加齢や紫外線曝露に伴う血管壁や周囲組織における萎縮と変性,②IgA,免疫複合体などの沈着によって引き起こされる血管の炎症,③アミロイド,クリオグロブリンなどのパラプロテインの沈着,④ビタミンC欠乏による血管壁からの血液漏出,⑤Ebola(エボラ)出血熱やMarburg(マールブルグ)熱などウイルス感染による血管透過性の亢進,などがある.

血小板数および機能

 血小板は,出血部位に血栓をつくり止血する「一次止血」の役割を担っている.

 血管内皮がなんらかの原因で傷つきコラーゲンが露出した部分にvon Willebrand(フォン・ヴィレブランド)因子が付着し,さらに血小板が血小板GPⅠb受容体を介して結合「粘着」することから一次止血が開始される.血小板が血管内皮障害部位に粘着すると,次に「変形」が起こり,α顆粒や濃染顆粒の「放出」が起きる.顆粒に含まれているトロンボスポンジン,フィブリノゲン,血小板由来成長因子,ATP,ADP,トロンボキサンA2,セロトニンなどが放出されるとさらに血小板は凝集(二次凝集)が進み,偽足を伸ばして血小板同士の結合が強固になっていく.変形・凝集した血小板のリン脂質は,引

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