症候を診るポイント
●限局性か,全身性かをまず判断.
●リンパ節の,局在,大きさ,硬さ,圧痛の有無,周囲の組織の癒着の有無を確認.
●縮小しない,急速に増大するリンパ節は,生検を行う.
▼定義
正常リンパ節の大きさは通常1cm未満であり,1cm以上のリンパ節はリンパ節腫脹と考える.ただし健常成人の場合,正常でも鼠径リンパ節(2cm以下)を触知する場合がある.
▼病態生理
リンパ液はリンパ節でろ過されるが,リンパ液によって運ばれてくる微生物,悪性細胞,その他の物質などにより反応性腫大をきたし,体表から触知可能となる.
▼初期対応
リンパ節腫脹の鑑別は,まず限局性(1か所のみの領域での腫脹)と全身性(2か所以上の隣接していないリンパ節領域で腫脹)のいずれかを確認.次に病変部位,随伴症状の有無で鑑別を行う.
▼鑑別診断
若年者では炎症性が比較的多く,高齢者では悪性腫瘍の割合が高い.限局性の場合は局所の炎症,結核性リンパ節炎,癌の転移を,全身性の場合は,ウイルス疾患(HIVを含む),梅毒,自己免疫疾患,悪性リンパ腫,白血病,薬剤などを考える.悪性腫瘍,HIV,結核は必ず鑑別に挙げる(表1-55図).
問診では,局所症状・随伴症状,全身症状(発熱,悪寒,体重減少など),原因曝露(ネコなどのペット飼育歴,虫刺され,生肉の接触歴,結核の曝露歴,性交渉歴),薬剤使用歴を確認する.悪性リンパ腫ではB症状と呼ばれる特徴的な症状がある(原因不明の38℃以上の発熱,6か月以内の10%以上の体重減少,一晩で下着を取り換える必要がある程の盗汗).Hodgkin(ホジキン)リンパ腫ではアルコール摂取後のリンパ節痛を呈する場合がある.
身体診察では,リンパ節腫脹の分布,リンパ節自体の所見(局在,大きさ,硬さ,圧痛の有無,周囲の組織との癒着の有無),脾腫や皮疹の有無を確認する.鎖骨上リンパ節腫大は悪性腫瘍を積極的に疑い,