診療支援
治療

【1】意識障害
disturbance of consciousness
伊利 孝宣
(沖縄県立中部病院・総合内科)
水野 篤
(聖路加国際病院・循環器内科)

症候を診るポイント

●意識障害は即,頭蓋内疾患と思い込まない.

●ショックを伴う意識障害ではショックに対する診断と治療を優先させる.

●脳血管障害を疑ったらまず低血糖を除外すること.

▼定義

 意識の医学的定義とは,自己とその周囲との関係を完全に認識している状態である.その内容には「覚醒度」と「外界からの刺激認識」の二要素があり,前者は脳幹から視床に至る上行性網様体賦活系(ascending reticular activating system:ARAS),後者は大脳皮質の種々の感覚野と辺縁系にあると考えられる.意識障害は覚醒障害と外界認識障害の2種類があり,それぞれ単独または合併して起こる病態がある.

▼病態生理

 脳幹部,視床,視床下部の障害や,両側大脳皮質の広範な障害などにより意識障害が生じる.脳幹部,視床,視床下部といったARASの障害は,腫瘍,外傷,虚血など,脳幹障害を起こす器質性疾患による場合が多い.大脳皮質の広範な障害は,代謝,薬物,感染などの大脳皮質の機能全体を同時に侵す非器質性疾患によることが多い.このように,脳自体の病変による意識障害を一次性脳障害,脳以外の病変で二次的に脳幹や大脳の機能低下による意識障害をきたすものを二次性脳障害という.

 一次性脳障害は想起しやすいが,二次性脳障害が臨床現場では思い浮かばないということが問題になる.そこで,意識障害をきたす原因疾患として,もれなく想起するためのフレームワークとしてはAIUEO TIPSが有名である(表1-56).「意識障害以外の客観的な所見」を加味しても鑑別疾患が挙がらない場合や,漏れていないかの確認で使用される.

▼初期対応

 意識障害患者の初期対応ではまず,ABC(A:Airway,B:Breathing,C:Circulation)およびその他バイタルサインの確認をする.具体的にABCとは,気道の確保(A),呼吸

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