症候を診るポイント
●緊急性のある「めまい」かどうかを判断する.
●めまいを中枢性めまい,末梢性めまい,前失神の3つに分けて考える.
●患者の訴える「めまい」を正確に知るために,めまいを別の言葉で表現してもらう.
▼定義
めまいは「眼」と「回(まひ)」に語源をもち,目が回るという状態を意味する.実際に患者が訴える「めまい」はさまざまな意味をもつため,どのような症状か明確にすることが重要である.また,中枢神経系の障害があるかどうかを診断できるようにしたい.
▼病態生理
病態としてのめまいは回転性めまい,前失神,浮動性めまいに鑑別することができる.
➊回転性めまい
回転性めまいを理解するにあたっては,内耳の構造を把握することが重要である.まずは,平衡感覚がどのように保たれているのかをおさえておく.
内耳は三半規管,前庭,蝸牛の3構造からなり,三半規管と前庭が平衡感覚を司る(蝸牛は音を感知).おおよそ三半規管はセンサー,前庭は受容体というイメージをもつとよい(図1-19図).
①体位変換を三半規管・前庭が感知し,前庭が信号を結合する
②前庭から脳に刺激が伝わる
③刺激が外眼筋へ投影される(動眼神経,外転神経,滑車神経)
上記は前庭神経系でつながっており,いずれかが障害されることにより外眼筋に異常運動が生じ,めまいが出現する.前庭系には末梢由来の前庭器官(内耳に位置する),中枢由来の内耳神経(前庭神経+蝸牛神経),前庭神経核(脳幹,小脳に位置する)が含まれる.
➋前失神
失神とは,大脳皮質全体の脳血流が急速に低下することにより起こる一過性の意識消失で,前失神はその前段階として眼前暗黒感やふらつきなどさまざまな症状が出現する.これらは失神同様,脳血流の低下が原因で,眼前暗黒感は網膜や後頭葉の血流が途絶えることによって出現する〔本章「失神」の項(→)も参照〕.
➌浮動性めまい
浮動性めまいの原因は頭痛,しび