症候を診るポイント
●自覚症状を要領よく聞き出す.「しびれ」の内容が,異常な感覚,感覚脱失,筋力低下であることもあるので注意する.
●再現性の高い所見を引き出すためには医師と患者の協力が不可欠.
●感覚解離に注意して見逃さない(Wallenberg症候群など)ことを心がける.
▼定義
体性感覚の障害を感覚障害という.体性感覚は,皮膚,皮下組織,筋肉,関節,骨膜に由来する感覚で,周囲の環境から得られる情報である.
▼病態生理
体性感覚の様式(sensory modality)には,①表在感覚として温痛覚,触覚,圧覚,②深部感覚(固有感覚)として振動覚,位置覚,運動覚,③複合感覚(識別感覚)として二点識別覚,立体覚,皮膚書字覚などがある.末梢神経から脊髄,脳幹,視床,大脳皮質まで,後根神経節,脊髄後角細胞または後索核,視床核の後外側腹側核(ventral posterolateral nucleus:VPL)と後内側腹側核(ventral posteromedial nucleus:VPM)の3つのニューロンを介して伝達される.感覚障害には,陰性症状(感覚鈍麻・消失)と陽性症状(感覚の過敏・異常感覚:ぴりぴり,ずきずき)がある.
神経終末から末梢神経幹に至る求心性線維は後根から脊髄後角を経て,視床,頭頂葉皮質に至る.主に温痛覚,触覚,侵害知覚を担う小径有髄線維,無髄線維は,脊髄後角に入って脊髄を交叉し対側(前索や前側索)を上行し脳幹,視床(VPL核)から中心後回(脊髄視床路,前外側系)に至る.主に位置覚,運動覚を担う大径有髄線維は,脊髄吻側から薄束,楔状束核でシナプスを経て延髄,橋,中脳被蓋の内側縦束,視床(VPM核)から大脳に(後索-内側毛帯路:毛帯系)至る.感覚解離は,局在診断上有用である.
▼初期対応
感覚障害は自覚症状が主体で,再現性の高い診察所見を引き出すため,医師と患者の協力が