診療支援
治療

【11】眼振
nystagmus
稲福 徹也
(稲福内科医院・院長)

症候を診るポイント

●急速相と緩徐相があり,急速相の方向を眼振の方向と定義する.

●眼振をみたら原因が末梢性か中枢性かを見分ける.

●一方向への水平・回旋混合性眼振は反対側の主に末梢前庭神経障害.

●注視方向性眼振と垂直性眼振は中枢性(小脳・脳幹部)障害であり,頭部MRI検査を実施.

▼定義

 眼球の律動的な振動であり不随意な運動.通常は急速相と緩徐相があり,急速相の方向を眼振の方向と定義する.例えば電車から外の景色を眺める人の眼を見ると,電車の進行方向に急速相をもつ生理的な眼振(視運動性眼振)がみられる.病的な眼振はその方向や出かたによって神経系の責任病巣や原因疾患を絞り込むことができる.急速相と緩徐相の区別がつかない振り子様眼振は視力障害や先天性眼振でみられ自覚症状はない.

▼病態生理

 眼振が生じるメカニズムは,眼球の一方向への偏倚(緩徐相)が原因でそれを修正しようとして反対側への速い動き(急速相)が繰り返し起こるためである.主に2つの原因があり,1つは末梢前庭系から中枢の前庭動眼反射系で情報のアンバランスにより眼球の偏倚が生じて,それを修正するために定方向性眼振が生じる.他方は眼球の注視保持する機構が障害された場合に,それを修正するために注視方向性眼振が生じる.眼振の記載方法を図1-21aに示した.一方向への水平・回旋混合性眼振(図1-21b)は眼振の向きと反対側の末梢前庭神経障害であるが,前庭神経核(中枢性)の障害でも生じうる.注視方向性眼振(図1-21c)垂直性眼振(図1-21d,e)は末梢性では出現せず中枢性障害である.さらに末梢性と中枢性の区別において,末梢性眼振は正面視で水平・回旋混合性眼振がみられた場合,それに応じた激しい回転性めまいや嘔吐を伴う.また注視により抑制されるので非注視下〔Frenzel(フレンツェル)の眼鏡使用〕での観察でより明瞭になる.

▼初期対

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