症候を診るポイント
●高齢者で認知機能障害をきたす要因には,薬剤の副作用からAlzheimer型認知症のような神経変性疾患まで,多彩な疾患・病態が含まれていることに留意する.
●認知機能障害を客観的に評価するうえで,認知機能検査を活用する.
▼定義
認知機能とは,①受容,②記憶と学習,③思考,④表出の各機能のことを指し,認知機能障害は,これらに障害が及んでいる状態である.そのなかでも認知症の鑑別が重要になるが,認知症の定義は,①認知欠損による自立障害,②失語・失行・失認・実行機能障害の1つ以上がある,③せん妄ではない,④ほかの精神疾患では説明ができない,となっている.認知症と健忘,抑うつ状態は鑑別が必要である.健忘は記憶障害のみであり,抑うつ状態は記憶低下や意欲低下をきたすことがあり注意を要する.
▼病態生理
認知症をきたす疾患は多彩であり,神経変性疾患としては,Alzheimer(アルツハイマー)型認知症,Lewy(レヴィ)小体型認知症などがある.続発性認知症には,血管性認知症(脳出血,脳梗塞など),低酸素脳症後,内分泌・代謝性疾患,感染症,腫瘍,外傷後などがある.血管性認知症はAlzheimer型認知症についで頻度が高い.
▼初期対応
初期対応として,まずは症状に関する病歴,家族などから生活状況を聴取する.次に,認知機能障害を把握する.受容機能の障害として失認を評価するうえで,視力・視野が保持されていれば,物を目の前に出して名前が言えるかどうかを確認する.聴覚が保たれていれば,話されたことばの理解を確認する.記憶に関しては,感覚記憶が保たれていれば,復唱が可能である.しかし,短期記憶に障害があると復唱は可能でも,少し時間をおいて思い出せない場合,記憶障害となる.短期記憶への移行を確認する.思考の障害では,計算や状況判断を確認する.表出機能に障害がある場合,話す,書くことを確認する