診療支援
治療

【15】せん妄
delirium
笹木 晋
(高槻病院・総合内科)

症候を診るポイント

●せん妄,特に低活動型のせん妄はよく見逃されている.

▼定義

 せん妄は急激な発症で起こる意識障害で,注意力の欠如や思考の錯乱がみられる.時間で変動するのが特徴である.70歳以上の入院患者の1/3に発症するという報告があるようにかなり頻度は多いが,見逃されることも多い.せん妄は過活動型と低活動型と両者の特徴が混在した混合型がある.過活動型せん妄は興奮や不穏がみられ,せん妄全体の25%を占める.低活動型のせん妄は,無関心や動作緩慢がみられるが,過活動型せん妄と比べて見逃されやすく予後が悪い

▼病態生理

 せん妄はさまざまな要因によって起こる.認知機能障害や高齢などもともと本人のもつ脆弱性(準備因子)と感染症,薬剤,環境因子など外的な要因(誘発因子)が相互に影響しあって発症する.

▼初期対応

 CAM(Confusion Assessment Method)が診断にはよく使われており,①急性発症と変動性のある経過,②注意散漫,③支離滅裂な思考,④意識レベルの変化を評価する.CAMは感度・特異度ともに高い.ICUではCAM-ICU,内科入院患者では3D-CAMが使われる.せん妄の症状は変動するので,過去に正常と判断しても疑う症状があれば再度評価を行う.

▼鑑別診断

 大酒家が入院して飲酒をやめるとアルコール離脱せん妄を起こすことがあるので入院前の飲酒歴を聞くことは必須である.アルコール多飲歴があり発熱や発汗,高血圧,頻脈,振戦などがあればアルコール離脱せん妄を疑う.

 うつ病は低活動型せん妄と同様に活動性の低下や不眠,無関心などの症状がみられるが,うつ病は覚醒レベルが保たれており,せん妄と比べて午前中に症状が悪いことが多い.

▼基本的治療方針など

 せん妄と診断したら,まず行うことはせん妄を誘発した原因がないか検索し,その原因を取り除くことである.バイタルサインを評価し,身体診察を

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