診療支援
治療

【2】易感染性
immunocompromised state
忽那 賢志
(国立国際医療研究センター・国際感染症センター国際感染症対策室医長)

症候を診るポイント

●免疫不全には「好中球減少・機能低下」「細胞性免疫不全」「液性免疫不全」「解剖学的・物理的・化学的・生理学的バリアの破綻」の4種類がある.

●免疫不全の種類によって罹患しやすい病原微生物が異なる.

▼定義

 感染症に罹患しやすい状態を指し,いわゆる免疫不全と同義である.

 免疫不全には「好中球減少・機能低下」「細胞性免疫不全」「液性免疫不全」「解剖学的・物理的・化学的・生理学的バリアの破綻」の4種類があり,それぞれにおいて頻度の高い感染臓器や微生物が異なる.免疫不全と一括りにせずに,目の前の患者がどの分類の免疫不全に当てはまるのかを考えることで,鑑別疾患や病原微生物を想起することができる.

▼病態生理

 以下の4つの免疫不全それぞれにおいて問題となる感染症の原因微生物を表にまとめた(表1-68)

好中球減少・機能低下

 抗がん剤などの細胞傷害性の薬剤は,造血前駆細胞の増生を阻害して骨髄を枯渇させることにより,好中球減少を招く.また放射線療法も照射率や合計照射量,照射部位によっては好中球減少を起こしうる.好中球は感染防御において細菌や真菌の貪食作用という重要な役割をもっており,好中球減少下では細菌・真菌感染症の罹患および重症化のリスクが高くなる

細胞性免疫不全

 細胞性免疫は,T細胞,マクロファージ,ナチュラルキラー細胞からなるが,これらはウイルスや細胞内寄生細菌などに感染した細胞や非自己のリンパ球などを破壊するという役割をもつ.これらの機能が障害あるいは欠損した状態を細胞性免疫不全といい,その原因にはさまざまなものがある.基礎疾患そのものによる細胞性免疫障害の代表的疾患としてはHIV感染症による後天性免疫不全症候群(AIDS)がある.その他に悪性リンパ腫,特にHodgkin(ホジキン)リンパ腫でも細胞性免疫不全がみられ,その治療である同種造血幹細胞移植ではT細胞・B

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