本章では,臨床でよくみる症候を取り上げます.主要な症候の診かたとその考えかたを理解することにより,正しい診断を行うことができるようになり,適切な治療を実施することができるようになります.
ここではまず,症候を拾い上げる基本的なアプローチ法について,簡単に解説します.
主要症候の診かた・考えかた
A 病歴聴取の基本――何を,どう聴くか
症候は「症状と徴候」ともよばれるので,症候とは病歴と身体診察から得られる情報を指します.さまざまな症候とその組み合わせから鑑別診断を考える学問を症候学といいます.
病歴の聴取は主に医療面接によって行われますが,医療面接以外の機会で病歴情報を入手することもあります.例えば救急搬送ケースでは目撃者や救急救命士からも情報を得ることがありますし,進行期認知症ケースでは家族や介護者,かかりつけ医から情報を得ることになります.
病歴情報の必須項目は,現病歴,既往歴,生活歴,