疾患を疑うポイント
●急に出現する,咳嗽,喀痰,発熱などの症状に加え,炎症反応と胸部X線やCTで新たに出現した陰影を確認.
●ペット飼育歴(オウム病)や温泉歴(レジオネラ肺炎)などの特殊環境下での肺炎に関する病歴はしっかり抑える.
●医療・介護関連肺炎や院内肺炎を除く.
学びのポイント
●外来や救急室で診断と治療方針を迅速かつ適切に判断する必要がある疾患.
●予後に関しては院内肺炎や医療・介護関連肺炎よりは比較的良好であるものの,重症肺炎の予後は不良であり,厳重な全身管理と有効な抗菌薬治療が必須.
●高齢者では肺結核が肺炎と誤診される例も多い.肺炎以外の疾患をしっかりと鑑別することが重要.
▼定義
市中肺炎は,基礎疾患を有しない,あるいは有しても軽微な基礎疾患の人が普段の社会生活のなかで発症した肺炎で,最近の入院歴がなく,介護や血液維持透析などの継続的な血管内治療も受けていない人に発症した肺炎である(医療・介護関連肺炎や院内肺炎の除外).
▼診断(図2-6図)
市中肺炎と診断した後は,まず敗血症の有無を評価して,全身管理の必要性,つまりICUもしくはこれに準じる病室へ入室させるかどうかを判断する.同時にA-DROPシステム(表2-5図)を用いて重症度を判断し,これを参考にして外来・一般病棟・ICUといった治療の場を決定する.また,市中肺炎では,非定型病原体(肺炎マイコプラズマなど)の関与が高いために,ガイドラインの「市中肺炎における細菌性肺炎と非定型肺炎との鑑別項目」を参考にして治療方針を決定することが推奨されている(表2-6図).
➊細菌性肺炎
肺炎球菌などの細菌により起こる.典型的な肺炎の症状としては,急激に出現する咳嗽,喀痰,発熱であり,時に胸膜痛を伴う.膿性痰を伴う咳嗽の場合は細菌性肺炎が考えやすい.胸部の身体所見では打診上濁音がみられ,触診で声音振盪の増強,聴診で気管支呼吸音やラ音が