疾患を疑うポイント
●中枢性神経疾患の罹患歴.
●長期臥床などADL低下.
●胃食道逆流症や胃切除などの消化器疾患の罹患歴.
●向精神薬や睡眠薬,抗コリン薬など口内乾燥をきたす薬剤の服用歴.
●経管栄養や低栄養状態.
学びのポイント
●口腔咽頭内容物を誤嚥するaspiration pneumoniaと,胃内容物を誤嚥するaspiration pneumonitis(Mendelson症候群)がある.
●aspiration pneumoniaは主として細菌による肺炎であり,高齢者に多い.
●aspiration pneumonitisは主として胃酸による化学性肺炎であり,全年齢層で起こりうる.
▼定義
口腔咽頭内容物や胃内容物を気道内に吸引(誤嚥)することによって生じた肺炎である.
▼病態
口腔咽頭内容物を誤嚥して発症するaspiration pneumoniaは,慢性中枢性神経疾患や老衰などに伴う嚥下障害がリスクとなるため,反復しやすい.
胃内容物を誤嚥するaspiration pneumonitis〔Mendelson(メンデルソン)症候群〕は,薬物の過剰投与,てんかん発作や麻酔などによる意識障害がリスクとなり,インターロイキン8などのサイトカイン,好中球や補体,ケミカルメディエーターが関与して化学性の肺障害が起こり,急性呼吸促迫症候群(acute respiratory distress syndrome:ARDS)を呈する.
▼診断
誤嚥の瞬間を確認できる場合を除いて,今の肺炎が誤嚥によって生じたのかどうかを判断するのは難しいため,誤嚥を起こしやすい宿主状態の把握,咳嗽,喀痰,呼吸困難などの臨床症状や検査所見,および嚥下機能評価,画像所見などから総合的に診断を行う.
▼治療
嫌気性菌を含めた口腔内常在菌を標的としてβラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン系抗菌薬を選択する.詳細は,本章「医療・介護