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治療

2 肺非結核性抗酸菌症(NTM感染症)
non-tuberculous mycobacteriosis
長谷川 直樹
(慶應義塾大学教授・感染症学)

▼定義・概念

 結核とらい菌を除く培養可能な抗酸菌である非結核性抗酸菌(non-tuberculous mycobacteria:NTM)による慢性経過をたどる肉芽腫性感染症である.

▼病態

 NTMは自然界や住環境に常在し,現在約190種が知られている.土壌や浴室,シャワーヘッドに存在する菌が感染源になるともいわれている.感染と発病の関係は不明だが,経気道感染による呼吸器感染症が最も多い.わが国で人に呼吸器感染症を惹起する主な菌は約20種類である.

▼疫学

 人から人には感染しないので届け出対象疾患でなく,その疫学には不明点が多い.世界的に呼吸器感染症の罹患率上昇が指摘されているが,国,地域により原因菌の頻度は異なる.わが国で2014年に実施された全国疫学調査によれば肺NTM症の罹患率は14.7/人口10万であり,すでに排菌を認める結核を凌駕していると考えられている.わが国ではMycobacterium avium complex(MAC)が最も多く(約90%),ついでMycobacterium kansasii(約5%),Mycobacteroides abscessus complex(約5%)である.

▼病型分類

 呼吸器感染症は画像所見により上葉に空洞病変を伴い結核に類似する線維空洞型と,中高年の瘦せ型女性の中葉・舌区に好発する小結節・気管支拡張型に大別され,後者が約70%を占める.線維空洞型と小結節・気管支拡張型が混在する症例も多い.ほかに孤立結節性陰影を呈する例,過敏性肺炎に類似する例があるがまれである.

▼診断

臨床症状

 軽症例では症状の乏しい例もある.咳,喀痰(血痰),進行例では喀血や体重減少,呼吸不全による息切れを認める.

診断基準

 2008年に日本結核病学会と日本呼吸器学会から提唱された診断基準により,自覚症状の有無にかかわらず本疾患に相当する画像所見(図2-12)

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