診療支援
治療

1 ニューモシスチス肺炎
Pneumocystis pneumonia(PCP)
藤倉 雄二
(防衛医科大学校講師・内科学(感染症・呼吸器))
川名 明彦
(防衛医科大学校教授・内科学(感染症・呼吸器))

 細胞性免疫不全に合併する代表的な日和見感染症である.

▼定義

‍ Pneumocystis jirovecii(ニューモシスチス・イロベチイ)による肺炎である〔第11章「ニューモシスチス症」の項()も参照〕.

▼病態・病理像

‍ P. jiroveciiはI型肺胞上皮に定着し,免疫不全の進行により発症すると肺胞腔内に泡沫状の滲出物が出現する.進行すると硝子膜の形成,肺胞上皮の腫大,間質の増殖と線維化が進行する.

▼症状

‍ 発熱咳嗽呼吸困難が主要な症状である.非HIV感染症患者では急速な経過をとりやすいが,HIV感染症患者では比較的亜急性に進行する.

▼身体所見・検査所見

 頻呼吸を認める.胸部聴診上はラ音が聴取されることは少ない.血液検査ではLDHの上昇とβ-D-グルカンの上昇を認める.呼吸不全を反映し,PaO2の低下とA-aDO2の開大を認める.胸部X線では肺野のすりガラス様陰影が特徴で,進行すると浸潤影を伴う.胸部CTでは非区域性・地図状分布のすりガラス様陰影を認め(図2-13),末梢肺野に正常部分を残すことがあり特徴的である.時間経過とともに囊胞病変を伴い,気胸を発症することもある.

▼診断

 誘発喀痰,あるいは気管支鏡で採取した生検組織ないしは気管支肺胞洗浄液中にP. jiroveciiを確認する.Diff-Quik(ディフ-クイック)染色では栄養体が,Grocott(グロコット)染色では囊子が確認しやすい.HIV感染症患者では菌体量が多く,気管支肺胞洗浄液での感度は90%以上であるが,非HIV感染症患者では菌体量が少ないため直接検鏡での診断が困難な場合がある.PCR法などによる遺伝子検査は高感度であり,検鏡での確認が困難な場合に有用である.

▼治療・予防

 治療はST合剤が第一選択薬であり,有害事象で使用できないときはペンタミジン,アトバコンが用いられる.HIV感染症患者で

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