疾患を疑うポイント
●高度の閉塞性換気障害や,混合障害を伴う慢性の細気管支病変がみられる患者,特に日本人や東アジアの人では本症を疑う.
学びのポイント
●今日ではまれな疾患ではあるものの,適切に診断治療されないときわめて予後不良な疾患.
●特に,日本を中心として東アジアで主にみられ,欧米ではほとんどみられないため,日本の医師は理解しておく必要がある疾患.
▼定義
日本で疾患概念が確立された原因不明の慢性上下気道の炎症性疾患.呼吸細気管支を中心に慢性的な炎症が生じることで,気道の狭窄,線毛運動機能の低下による喀痰の増加がみられるのが特徴である.未治療例では進行性の慢性呼吸困難を呈する.ほとんどの患者で慢性副鼻腔炎を合併するため,副鼻腔気管支症候群の1つに分類される.
▼疫学
日本人をはじめとした東アジア人に多く,欧米では報告がまれで,人種特性がみられる疾患である.日本人患者は遺伝子型としてHLA-B54をもつ頻度が高い.一方,韓国ではHLA-B54が少なく,HLA-A11をもつ頻度が高いとされ,遺伝的背景に加えて別の要因が存在する可能性も示唆されている.
▼検査
胸部X線や胸部CT(図2-15図)で,両側の肺全体に広がる小さな粒状の影や気管支壁の肥厚,気管支の拡張などがみられる.呼吸機能検査では混合性換気障害,血液検査では白血球数の増加,赤沈,CRPの上昇,寒冷凝集素価の高値,RA因子陽性,血清IgAの増加などがみられる.喀痰では,肺炎球菌,インフルエンザ菌が検出され,進行例では緑膿菌が多く検出される.
▼診断
表2-16図にわが国の診断基準を示す.
▼治療・予後
マクロライド少量長期療法が治療の基本となる.発症早期ほど治療効果がよいとされている.増悪の予防には,栄養状態の改善やインフルエンザワクチン,肺炎球菌ワクチン薬の接種も重要となる.細菌感染による増悪には,原因となる細菌に対する抗菌