疾患を疑うポイント
●慢性の咳,喀痰がみられ,また,血痰や喀血を認める患者では本症を疑う.
学びのポイント
●気管支拡張症の主な原因について理解する.特に,遺伝性疾患や先天性疾患は,まれではあるが発見の手がかりとなる所見であり,鑑別として挙げられるようにする.また,気管支拡張症の画像の特徴についても理解する.
▼定義
気管支拡張症は,さまざまな疾患によって引き起こされる不可逆的な気管支拡張像を呈する疾患.肺のさまざまな部分に生じるびまん性気管支拡張や,1,2か所だけにみられる限局性気管支拡張がある.
▼原因
遺伝性疾患(囊胞性線維症,原発性線毛機能不全症候群),また,さまざまな先天性および後天性免疫不全症,感染(小児期のウイルス性肺炎,結核,非結核性抗酸菌症,真菌感染症),アレルギー性気管支肺アスペルギルス症,肺線維症などがある.遺伝性や免疫不全症に伴うものはびまん性となることが多い.
▼臨床症状
無症状の場合もあるが,咳や膿性痰,時に血痰や喀血を呈する.血痰や喀血は高齢の気管支拡張症患者のおよそ半数にみられる.気管支拡張の範囲が広がれば息切れを呈する.
▼病態
気管支拡張症の最も重要な発症機序は,感染,気道の閉塞,免疫反応による気道の傷害や隣接する肺実質の線維化である.多くの呼吸器疾患は肺の炎症を引き起こすが,プロテアーゼなどの放出により,気道壁の損傷を生じ拡張が生じる.このような変化は,細菌の排除機能を障害し,インフルエンザ菌,緑膿菌,Moraxella catarrhalisなどの気道への定着を起こしやすくする.
▼画像所見
気管支拡張症の胸部X線写真所見はさまざまである.気管支壁に沿って並行する線(tram-line)や,輪状影,囊胞状陰影,特定の区域の血管影の増強と不明瞭化などとしてみられることが多い.胸部X線写真では正常所見であるが,CTでは明らかな気管支拡張像がみられる場合も